第43回 おめでとうオリゴ糖~アーチーズの巻|かんがえるジュークボックス/亀山博之

コラム

ホワイトデイ

 3月といえば、ホワイトデイ。ヴァレンタインのお返しというかお返事の日というか???これは日本独自の習慣らしい。
 2月の前号では、Valentineという名の真っ赤な有名なタイプライターを紹介したが、今回はホワイトデイなので、白いValentine。

白いValentine by Olivetti
白いValentine by Olivetti

 やはり愛の季節にふさわしいタイプライターである。ちなみに、白いValentineは数が少ないので、見かけたら即買うべきだ。

Valentines
Valentines

 というか、タイプライターはお手頃なものを見かけたら、とりあえず買うべきだ。

甘い甘い季節

 チョコレートやキャンディなどなど、甘いものがこの時期にはよく似合う。というわけで、今回はアメリカ発、1969年のアーチーズ(The Archies)による大ヒットナンバー「シュガー?シュガー(Sugar Sugar)」を聴きましょう。

「シュガー?シュガー」アーチーズ 日本盤
「シュガー?シュガー」アーチーズ
日本盤

 ジャケットには、ほのぼのとした海外風味のイラストが描かれている。ジャケット裏面の説明には「アーチーズのメンバーは、アーチー?アンドリュース、レギー?マンドル、ジャグヘッド?ジョーンズ、ベティ?クーパー、それにヴェロニカ?ロッジの5人です」とある。しかし、実際にはこんな人たちは存在しない。つまり、アーチーズは架空のバンドなのだ。ヒットを狙って、無理やり作られたヴァーチャル?バンドの先駆けなのであった。何はともあれ、この「シュガー?シュガー」、軽いノリがかわいらしくてとても良い。では、聴いてみよう。

*(Chorus)

Sugar (Ah, honey, honey)
シュガー (ハニー、ハニー)

You are my candy girl
君はボクのキャンディガール

And you’ve got me wanting you
夢中にさせられちゃってる


Honey (Ah, sugar, sugar)
ハニー (シュガー、シュガー)

You are my candy girl
君はボクのキャンディガール

And you’ve got me wanting you
夢中にさせられちゃってる

I just can’t believe the loveliness of loving you
君が大好きなこの素敵な気持ち

I just can’t believe it’s true
本当だなんて信じられない

I just can’t believe the wonder of this feeling, too
不思議なこの気持ちだって

I just can’t believe it’s true
本当だなんて信じられない


*(Chorus)


When I kissed you, girl, I knew how sweet a kiss could be
君にキスしたら、どんなに素敵かわかってた

I know how sweet a kiss could be
どれほどキスが甘いかって

Like the summer sunshine, pour your sweetness over me
夏の太陽みたいに 優しさを注いで

Pour your sweetness over me
ボクに君の優しさを注いでよ


Pour a little sugar on it, honey
ちょっぴり砂糖を、ねえハニー

Pour a little sugar on it, baby
ちょっぴり砂糖を、ねえベイビー

I’m gonna make your life so sweet, yeah, yeah, yeah
君の人生をスウィートにしてあげるから

語源をたよりに

 さすが「シュガー?シュガー」というだけに、ひたすら甘くて軽いポップな1曲である。アーチーくんがおそらくリーダーなので、バンド名はアーチーズ。Archieという名前に複数形の“-s”を付けたのだ。日本のバンドだったら、「ザ?弓組」とかになっていたのだろうか。
 ところで、“arch”という単語は、いくつか小ネタを提供してくれる語である。“arch”が含まれる単語のひとつに「建築家」という意味の“architect”がある。この語源はアーチ型の門を作る人だと思っている人がときどきいるようだが、あれは誤りである。正しくは「大工の長」。ギリシャ語由来の「アーキ」(=長、頭)と「テクトーン」(=建てる人)という言葉が合わさってできた語。つまり、大工さんのリーダーである。

山形市のQ1のアーチ
山形市のQ1のアーチ

 あれ、“arch”といえば「弓」とか「アーチ」じゃないのか、とお思いの方もいらっしゃるかもしれない。弓のほうの“arch”の語源は、ラテン語の“arcus(弓、曲線)”である。英語はさまざまな言語を取り入れてできあがってきたため、このような混乱が生じるわけだ。

 ついでにもうひとつ。リーダーという意味の「アーキ」が英語に取り入れられて、“-archy”という「政治、政体」を意味する接尾語もまた生まれている。たとえば“monarchy”という言葉がある。これは「単一、ひとつ」を表す“mono”と“-archy”が合わさっているから、これは「独裁政治」という意味になる。「寡占、少し」を表す“oligo”と合わされば、“oligarchy”、つまり「寡占政治」となる。オリゴ、どこかで聞いたことがあるでしょう。そう、オリゴ糖。あれは言い換えれば「少糖」で、“oligo saccharide”のことである。シュガーだ、シュガー。

卒業おめでとう

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 卒業してもこのコラムをぜひ読んでくださいね。ではあらためて、 ありがとうオリゴ糖卒業おめでとう!甘美な喜びをひととき噛みしめて、虫歯に気をつけて、春からの生活への新たな一歩を踏み出してください。

 それでは、次の1曲までごきげんよう。
 Love and Mercy

(文?写真:亀山博之)

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亀山博之(かめやま?ひろゆき)
亀山博之(かめやま?ひろゆき)

1979年山形県生まれ。東北大学国際文化研究科博士課程後期単位取得満期退学。修士(国際文化)。専門は英語教育、19世紀アメリカ文学およびアメリカ文学思想史。

著書に『Companion to English Communication』(2021年)ほか、論文に「エマソンとヒッピーとの共振点―反権威主義と信仰」『ヒッピー世代の先覚者たち』(中山悟視編、2019年)、「『自然』と『人間』へのエマソンの対位法的視点についての考察」(2023年)など。日本ソロー学会第1回新人賞受賞(2021年)。

趣味はピアノ、ジョギング、レコード収集。尊敬する人はJ.S.バッハ。